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Май
2017

ファッションとロシア革命

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 わずか20年で、ロシアのファッションは360度変わった。メリハリのあるシルエットと豪華な帽子が、女性らしさを台無しにする野暮ったい上着とプロレタリア三角巾になった。なぜ、どのようにして、ファッションがこのようになったのだろうか。

ベル・エポックから制服へ

 19世紀末から1914年までの「良き時代」、ロシアでも、ヨーロッパでも、女性のイメージはふんわりとしていてはかなかった。コルセットでウエストを42~45センチまでしめあげ、特別な張りでバストとヒップを強調して、砂時計のようなシルエットをつくり、スカートには長いトレインをつけていた。主に、優しい落ち着いた色合いが使われ、肌の白さは米のパウダーで強調され、ボリュームのある髪型には大きな帽子がついた。複雑なカットのドレスには、地味でありながら奇抜な装飾が施されていた。この時、ロシアのファッショニスタ(おしゃれに敏感な人)の物の装飾は、西ヨーロッパよりも豊富であった。古代ルーシのモチーフへの回帰が流行していたため、手づくりの亜麻のレースにとても人気があった。

女性は、主に、優しい落ち着いた色合いが使われ、肌の白さは米のパウダーで強調され、ボリュームのある髪型には大きな帽子がついた。写真:若い女の肖像19世紀末、ロシア=Getty Images

 第一次世界大戦前の数年間、服は派手かつエキゾチックになり、ロシアはヨーロッパ・スタイルのトレンド・セッター(流行創造人)になりつつあった。パリで行われた「セゾン・リュス(ロシアの季節)」では、振り付けだけでなく、才能ある芸術家レフ・バクスト、アレクサンドル・ベノワ、ニコライ・リョリフによってデザインされた衣装に、人々は驚いた。「ア・ラ・リュス(ロシア風)」西側スタイルには、伝統的な民族衣装の斜めボタン、装飾刺繍、頭飾りココシニクのテーマなどが取り入れられている。この流れは後に、貴族の亡命ロシア人の生活の糧となる。ヨーロッパではロシア・スタイルのブティックや工房がオープンし、亡命貴族の美女たちはココ・シャネル、ジャンヌ・ランバン、ポール・ポワレの初期のトップモデルになっていった。

第一次世界大戦前の数年間、服は派手かつエキゾチックになり、ロシアはヨーロッパ・スタイルのトレンド・セッター(流行創造人)になりつつあった。写真:バレエ ナルキッソス、ニンフエーコー、レオン・バクスト

 また、1910年代には、ファッション自体が発展し始めた。女性が自動車で移動しやすいようにと、スカートは短くなり、服のすそはやわらかくなり、帽子は小さくなっていった。男性の服にも変化があらわれ、色の付いたシャツ、短いニッカポッカ、ハットやベレー帽が登場するようになる。

「ア・ラ・リュス(ロシア風)」西側スタイルには、伝統的な民族衣装の斜めボタン、装飾刺繍、頭飾りココシニクのテーマなどが取り入れられている。写真:バレエ・リュスのアレクサンドラ・ダニロワ=Global Look Press

 戦争で素朴さが好まれるようになり、愛国的なムードの強まりで、多くのファッショニスタが国産品を支持した。服は軍服や学生服のような制服に似たものになっていった。ウエスト部分が細くなっている服や、シンプルなカットのワンピースが流行し、スカートはミディ丈になり、帽子は控えめになった。さらに、女性はコルセットから解放され、髪の毛を短くカットするようになった。

戦争で素朴さが好まれるようになり、愛国的なムードの強まりで、多くのファッショニスタが国産品を支持した。写真:ベストゥージェフ教育コースの学生、サンクトペテルブルク、1913年=ロシア通信

古代の勇士とフェミニストの服

 ロシア革命後、ソ連政府は赤軍の制服づくりに取り組んだ。1918年に特別委員会が創設され、有名な芸術家ヴィクトル・ヴァスネツォフやボリス・クストジエフなどが招かれた。基本には歴史的な衣装が用いられた。ブジョノフカ帽は古代ルーシの勇士のヘルメットに似ていた。

政府は、「正しい」イデオロギーを形成するには、ソ連人の見た目の管理も重要であることを理解していた。ソ連、1924年=Getty Images

 庶民の服も、イデオロギーや物不足によって大きく変わった。皮革製のコミッサールの上着、麻製や兵士用ラシャ製のワンピースとタイト・スカートが出回り、女性は男性の詰襟シャツも着ていた。赤い三角巾は解放のシンボルとなり、あごの下で結ぶ伝統的な巻き方ではなく、後ろで結ぶようになった。コムソモールの男子も女子も、ドイツの青年共産主義組織「赤色ユングシュトルム」の制服をもとにした「ユングシュトルモフカ」を着ていた。これは落ち着いた緑色の折襟とパッチ・ポケットのついた上着で、ベルトと剣帯を一緒に着用していた。

労働者・農民のファッションを、ラマノワはゼロから考え、プラトーク(スカーフ)、クロス、タオルを使った。

 革命前に名をはせたデザイナーのナデジダ・ラマノワは、アナトリー・ルナチャルスキー・ソ連文化相に、現代の服の工房を創設することを提案した。政府は、「正しい」イデオロギーを形成するには、ソ連人の見た目の管理も重要であることを理解していた。労働者・農民のファッションを、ラマノワはゼロから考え、プラトーク(スカーフ)、クロス、タオルを使った。このような材料からでもコレクションをつくることができ、パリ万博(1925)でグランプリを受賞した。とはいえ、庶民は当時、このファッションの試着などできなかった。布地が自由に販売されるようになったのは1936年以降であり、それまでは古い服を縫いなおしたり、入手できるあらゆる材料を使ったりしていた。

ミンクの毛皮コートを着て、ベッチン帽子を被っているアリシア・アラノワ踊り子。=Getty Images

 1921年の新経済政策(ネップ)の導入で、国は豊かになった。個人でヨーロッパから服を輸入する業者があらわれるようになり、ソ連のファッションに「マレンゴ」服、フェルト・ブーツ、「オックスフォード」ズボン、ローウエストのワンピース、マント、真珠など、「狂騒の20年代」のムードが浸透した。ソ連のファッショニスタは、無声映画のスターの真似をしていた。1920年、国立高等美術工芸工房が開校。現代人に「灰色群衆スタイル」と呼ばれているソ連の産業デザインの基礎をつくった。

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